研究概要 |
外来刺激に対し細胞内情報伝達系は,互いに密接な関係をもって細胞をコントロールしている. 石炭化では, 主にcyclicAMP(cAMP)によってなされているというのが定説であるが, 本研究では, 細胞内セカンドメッセンジャーとしてのCa^<2+>が如何に関連するかを検討した. 本実験に入る前に, 細胞内Ca^<2+>濃度〔Ca^<2+>〕iの測定技術を確立する目的から線維芽細胞(L細胞)を用いて, NaFの影響を検討した. その結果, Caキレート螢光物質としてはFura2/AMが,測定用培養器としてはBionique chamber(Corning)がそれぞれ有用であることが判明した. この技術を応用して, 以下の実験を進めた, 細胞は(1)マウス胎仔頭蓋骨より連続酵素消化法により分離した初代培養骨芽細胞と(2)継代樹立した造骨細胞株,(3)ラット歯髄より分離した初代培養細胞と(4)継代樹立した歯髄細胞株を用いた. 種々の刺激に対して以下の結果が得られた. すなわち, 〔Ca^<2+>〕iは細胞外Ca^<2+>レベルに敏感に応答し, 変化するが, その結果が副甲状腺ホルモン(PTH)やプロスタグランジンE.ナ_<2.ニ>によるcyclicAMP生成やアルカリフェスファターゼ(ALP)活性に対する刺激的影響をモジュレートする現象が歯髄細胞で観察された. PTH自体, 〔Ca^<2+>〕iをゆっくりと上昇させる作用があることを観察し, この作用もやはり, 細胞外Ca^<2+>レベルに依存していることを解明したが, この機構については目下, 検討中である. また, NaFは各々の細胞の〔Ca^<2+>〕iを上昇させる作用をもつことが確認されたが,ある状況下ではPTHの作用と極めて類似していることが発見された. 一方, ALPを細胞膜に結合させる役割りをもつ膜燐脂質の1種,phosphatidylinositolの代謝物のphosphatidic acidは造骨細胞の〔Ca^<2+>〕iを上昇させると同時に, ALP活性を低下させるという興味ある知見も得られた.
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