研究概要 |
軟骨は石灰化しないかぎり骨と置換されない。したがって、軟骨の石灰化は、骨格の発生と成長の過程で、重要な制御段階となっている。しかし、軟骨の石灰化の制御機構はほとんど不明であった。この点を追究するため、我々はまず、試験管内での軟骨、分化、石灰化モデル系を開発しようと試みた。その結果、遠心管内で成長板より分離した軟骨細胞をペレット状にして培養することにより、従来の培養法では不可能であった軟骨の石灰化をin vitroで再現することに初めて成功した。しかも、軟骨の石灰化には、通常の成熟軟骨細胞が最終分化して肥大軟骨細胞へと変換しなければならないことを明確に示した(katoら、Pro. Natl Acad.,Scio VSA. 1988)。 従来、軟骨の石灰化には毛細血管の侵入と、成長板に隣接する骨側の細胞の影響が不可欠かつ重要であると考えられていたが、我々の結果は、これらの他細胞が存在しなくても、軟骨細胞が自分自身で最終分化して石灰化をも誘導させることを初めて証明した。 しかも、新しいin vitroの軟骨分化・石灰化モデルを開発することにより、軟骨細胞の最終分化と細胞外基質の石灰化の制御には多くの成長因子とホルモンが関与していることが示唆された。すなわち、Fibroblast grouth factor,Transforming grouth factor-β、副甲状腺ホルモンは抑制的に作用する一方、カルシトニン、甲状腺ホルモン、インターロイキンー6などは石灰化を促進することが判明した。これらの知見は、動物実験での観察と組み合わせることにより、内軟骨性骨化と骨成長に関する我々の理解を著しく深めると期待される。
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