研究概要 |
食細胞は炎症巣に遊走し, 貧食作用を営み, 活性酸素を産生し, ライソゾーム酵素を放出するなど生体防御に重要な役割を果している. 食細胞がこれらの機能を発揮する際に細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が必須であると考えられる. 本年度は(1)モルモットマクロファージを走化性ペプチド(fMLP)で刺激した際のホスホリパーゼCの活性化にGTP結合蛋白質が関与するかどうかを調べると共に, (2)GTPによるCa^<2+>遊離の調節機構の解析を進め, さらに(3)細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>放出に重要と考えられているイノシトール1,4,5ー三燐酸(InsP_3)より1,3,4,5ー四燐酸への変換に関与するInsP_33ーキナーゼの精製を行った. 〔研究成果の概要〕(1)マクロファージ膜分画にGTPrsを添加すると濃度依存的にInsP_3が増加した. さらに百日咳毒素(IAP)でマクロファージを前処理すると, fMLP刺激によるPIーP_2の水解, InsP_3の産生, 細胞内遊離カルシウム濃度の上昇及びマクロファージの偽足伸長が抑制された. これはcAMPによる効果ではなかった. また, IAPによって修飾された蛋白質は, SDSーPAGEにより, 41KのGTP結合蛋白質であった. 以上のことから, マクロファージにおけるfMLP受容体を介した情報伝達には, 41KのGTP結合蛋白貭が介在していることが示唆された. (2)サポニン処理マクロファージを用いてGTPとInsP_3によるCa^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>遊離能の関連を調べ, 走化性因子によるCa^<2+>動員はInsP_3によってなされており, GTPはCa^<2+>量の長期にわたる調節に関与する可能性を示唆する所見を得た. (3)InsP_33ーキナーゼの精製を進めつつあるが, これまで至適pH6ー8, 至適温度30℃の酸性蛋白質で, 新しいカルモジュリン依存性酵素であることが判明した.
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