研究概要 |
唾液腺細胞中の脂肪酸化蛋白質(acylated protein:AP)の細胞内局在性を明確にするために高純度の形質膜画分や各種オルガネラの分画法を検討した. その結果, ホモジナイズした耳下腺細胞では庶糖及びPercoll密度勾配遠沈法による分画で, 代表的な局在酵素の活性発現の特性観察から供試し得る画分が得られた. このうちの分泌顆粒はin vitro系では形質膜との間に特異的な相互作用を認め, 開放分泌観察のモデル系としても使用可能であることを明らかにした. 本顆粒の膜脂質組成はミクロソーム由来のものなどと比較して明らかに特異的であり, ホスファテジルエタノールアミン含量の外にリゾ燐脂質含量がたかく, 電子スピン共鳴法による膜流動性の観察結果もこれら組成の特性と相関する物性を示した. APの生化学的特性を検討する目的から, 各種試料でアシル基を標的とした抽出法を検索し, 非イオン性界面活性剤のTriton Xー114を用いるphase separation法が効果的であり, これによって分画したAPのアシル基の確認と,蛋白質部分の電泳的特性が明らかになりつつあるが, 精製を進めることにより, 所謂, アンカー物質の特性, 並びに膜機能と相関した蛋白質燐酸化酵素活性の関与について検討が進行中である. 主要唾液腺の膜燐脂質構成脂肪酸の特性比較は既に完了した. 一方, AP生合成の基質となるアシル基については各種アシルーCoAを基質とし, アシル基転移反応に係る酵素系の検索を行い, 本酵素系の各唾液腺における活性発現の特性の外, 薬理的な唾液分泌刺激を行うと特有の性性変動を認めることを明らかにした. 以上のように, 現在進行中の実験を含めて引き続き来年度はこれらの成果を基礎とし, 機能と相関したAPの細胞内動態を標識した脂肪酸あるいは酢酸のレベルから追求していく. 今回の主要機器であるラジオガスアナライザーは目的とするがガクロマトグラフィーとの接続に技術的な問題があったが, 既に解決した.
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