研究概要 |
昭和62年度, ILー1に関する生化学的並びに免疫学的研究として, 合成ムラミルジペプチド刺激モルモット線維芽細胞由来のT細胞活性化因子(FTAF)の性状の解析ならびにヒトリコンビナントILー1分子と腫瘍壊死因子(TNF)との作用解析を目ざし, 研究成果として以下の所見を得た. (1)ILー1αとILー1βに特異的な抗血清及びモノクローナル抗体を用いた結果, FTAFはヒトILー1とは類似性の少ない分子であることが示唆された. (2)SDSーポリアクリルアミドゲル電気泳動にて, FTAFは分子量約2万と3万5千の位置に認められ, マクロファージ由来ILー1様因子(分子量約6万5千)との違いが明らかとなった. (3)培養軟骨細胞レベルでサイトカイン作用を高感度に解析する方法を確立した. (4)(3)の方法によりILー1(α, β)とTNFは結合組織の主要成分であるプロテオグリカンの合成を抑制する一方, その分解を促進することを明らかにした. (5)ILー1αに対する6種類のモノクローナル抗体を作製し, ILー1活性ならびに上記のプロテオグリカン合成・分解に及ぼす中和能を調べ, ほぼ平行関係がみられることを明らかにした. また, ILー1に関する免疫組織化学的並びに臨床的研究では, (6)PLP固定後のヒト根尖病巣組織内におけるILー1の局在をモノクローナル抗体を用いてABC法により検索した結果, 主として多形核白血球, 内皮細胞なでに陽性所見を認めた. (7)根尖病巣を有する歯牙より調整した根管浸出液にはILー1様活性が認められ, このILー1様活性は治療の経過に伴い, 消失することが明らかになった.
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