研究概要 |
生体親和性,耐食性,機械的性質からチタンは新しい歯科用金属材料として大きな期待が持たれ,一部章はチタンの歯科鋳造の実用化が行われている. しかし,チタンも陶材を焼付けるのがきわめて難しい. 本研究はチタンの合金化により陶材焼付けを可能にしようとするものである. チタンにどのような元素をどのように合金化したら,陶材焼成にもっとも適した歯科鋳造用チタン合金になるかを検討し,これを実現させることを目的とした. 本年度はまず純チタンと陶材の界面結合強度と反応機構の検討から基本的なチタンと陶材との焼成機構の解明を行った. SiO_2,Al_2O_3,K_2Oなどの成分比の異なる市販陶材セラムコIIおよびビタを純チタン丸棒に焼成した. 焼成条件として大気中焼成,アルゴンガス焼成,高純アルゴンガス焼成の3条件とした. これらの試料の引抜き法による界面結合強度の測定,界面結合組織の観察,界面の微小X線分析を行った. 陶材と純チタン丸棒の引抜き強度はいずれの条件でも低かった. セラムコIIと純チタンでは大気中で焼成したものが最も弱く,アルゴンガス中では高純度アルゴンを用いても焼付け強さは変らなかった. ビタ陶材では大気中で焼成した方がアルゴンガス中より高い焼付け強さを示した. またセラムコII陶材の方がビタ陶材より引抜き強度は高かった. 界面の微小X線分析の結果から,セラムコII陶材にはZrO_2,LiO_2が含まれており,これがチタンの表面酸化物との結合に寄与していることが推定された. また,ビタ陶材の熱膨張は純チタンよりかなり大きいことも,界面結合強度の弱かった一因と考えられた. しかし,いずれにしても純チタンと陶材との焼付け強さは現在用いられているNiーCr合金との焼付け強さにくらべてはるかに弱く,実用に供しないと考えられた.
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