チタンの歯科への応用が盛んとなってきたが純チタンの陶材焼付けはまだきわめて難しい。そこで本研究ではチタンの合金化によりチタンの陶材焼付けを可能にし、チタンの応用範囲をさらに広げようとするものである。前年度はまず純チタンと陶材の界面結合強さ、反応機構を基本的に検討した。この結果、純チタンと陶材の界面結合強さは、焼成条件を種々に変化させてもきわめて弱く実用に供し得ないことがわかった。この原因は主に現在市販の陶材の熱膨張率が純チタンの熱膨張率より3割以上大きいため、冷却時に陶材に大きな引張力が働き界面剥離すること、また界面結合強さ自体も弱いことが推定された。そこで本年度は熱膨張率が純チタンより大きいTi-20wt%Cr-0.2Si合金およびTi-25Pd-5Cr合金を選び、これらと陶材との界面結合強さを引き抜き法により測定し、界面結合組織の観察、微小X線分析を行った。Ti-20wt%Cr-0.2Si合金の熱膨張率は11.5×10^<-6>、Ti-20Pd-5Cr合金のそれは13.5×10^<-6>で純チタンの熱膨張率10×10^<-6>より大きかった。引き抜き強さはいずれの場合も高く、陶材焼付け用のNi-Cr合金の引き抜き強さよりやや高かった。とくに熱膨張率の大きいTi-25Pd-5Cr合金の引き抜き強度が高かった。この引き抜き強さは焼成時の焼成炉内の雰囲気をアルゴンガス雰囲気とするより大気中とした方か高くなった。アルゴンガス雰囲気中での焼成では、陶材との界面に陶材との結合に十分なチタンの酸化層が少なく、引き抜き強度が低下したものと考えられた。しかし板状のTi-25Pd-5Cr合金とTi-20Cr-0.2Si合金に陶材を大気中で焼付けても、曲げ試験をするとNi-Cr合金の場合より小さな曲げで陶材が剥離することが判った。板状の試料では熱膨張係数差の影響が出やすいものと思われる。このため、チタン用に熱膨張率の小さい陶材の試作を行い、これにより曲げによる焼付け強さを検討中である。
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