チタンに陶材焼付けが可能となれば、チタンの補綴領域への応用範囲が格段に広がることが期待される。しかしチタンの陶材焼付けはまだきわめて難しいのが現状である。本研究はチタンを合金化と陶材の改良により、陶材焼付けを可能にすることを目的にし進めてきた。 まず純チタンと陶材の界面結合を検討し、純チタンでは熱膨張率が陶材よりかなり小さいこと、陶材との結合反応に寄与するチタンの表面酸化膜が剥離し易いことから界面接合強さが得られないことが明らかにされた。そこで熱膨張率が純チタンより大きく、酸化膜の結合が強固なβ型チタン合金Ti-20Cr-0.2SiとTi-25Pd-5Crを選び陶材を焼成し、引き抜き法による接合強さ、界面反応について調べた。この結果β型合金と陶材との接合強さは純チタンの陶材との接合強さよりはるかに大きかった。しかし、板状のβ型チタン合金に陶材を焼付けるとわずかな曲げ応力で陶材に亀裂が入り、界面が剥離することが判った。これはβ型合金でも熱膨張率が陶材の熱膨張率まだ小さいためと考えられた。そこで熱膨張の低い陶材の試作を行った。熱膨張率が7.2×10^<-6>のキャスタラブルセラミックスと15.8×10^<-6>の陶材を1:4、2:3、1:1、3:2、4:1で混合すると、熱膨張率が13.5、11.0、10.0、9.0、8.6×10^<-6>の陶材となった。これらの陶材を減圧下で板状のTi-20Cr-0.2Si合金およびTi-25Pd-5Cr合金に焼き付けて接合強さを求めた。この結果、熱膨張率が9〜11×10^<-6>の陶材は、大きな曲げたわみになるまで剥離や亀裂が起こらず、これらβ型合金との高い接合強さを示した。陶材の破壊後のβ型チタン合金には陶材が付着しており、十分な界面接合をしていた事が判った。このようにTi-20、Cr-0.2Si合金およびTi-25Pd-5Cr合金を用い、これらと熱膨張率のがほとんど同じ陶材を焼き付けることによりチタンの陶材焼付けが可能となった。
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