生体親和性、耐食性、機械的性質、軽量性からチタンは新しい歯科用金属材料として大きな期待が持たれている。しかしチタンに陶材焼き付けするのがきわめて難しいという欠点がある。本研究はこのチタンを合金化と陶材の改良により、陶材焼付けを可能にすることを目的とした。 まず純チタンと陶材の焼付け強さ、界面結合反応機構の検討を行った。試作した陶材焼成炉を用い、大気中(減圧)、低真空+アルゴンガス中高真空+アルゴンガス中の3条件でそれぞれ2種類の市販の陶材をチタンの丸棒に焼成した。これら陶材と丸棒との界面結合強さはいずれの焼結条件でもNi-Cr合金に較べきわめて弱く、実用に供し得ないものであった。これは、純チタンでは熱膨張率が陶材よりかなり小さいこと陶材と結合しているチタンの表面酸化膜が剥離し易いことなどによることが明らかになった。 そこで熱膨張率が純チタンより大きく、酸化膜の結合が強固なβ型チタン合金Ti-20Cr-0.2SiとTi-25Pd-5Crを選び陶材を焼成し、引き抜き法による接合強さ、界面反応について調べた。陶材焼成条件は大気中(減圧)、低真空+アルゴンガス中、高真空+アルゴンガス中の3条件とし市販の陶材をチタンの丸棒に焼成した。この結果、β型合金と陶材との接合強さは純チタンと陶材との接合強さよりはるかに大きかった。とくに大気中でTi-25Pd-5Cr合金を陶材焼成した場合が最も強い界面接合強さを示した。しかし、板状のβ型チタン合金に陶材を焼付けるとわずかな曲げ応力で陶材に亀裂が入り、界面が剥離することが判った。ちこれはβ型合金でも熱膨張率が陶材の熱膨張率よりまだ小さいためと考え、熱膨張率の低い陶材を試作しβ型合金に焼き付けた。この結果、β型合金にβ型合金よりやや低めの熱膨張率の陶材を焼き付けると大きなたわみにも耐える十分な接合強度が得られることが判った。
|