研究概要 |
骨組織の変化すなわち骨吸収あるいは増加はその組織中に流れる血流量の変化に起因していることが予測される. 血流量の変化を把握することは骨組織の変化を知ることにつながると考え, 成犬で血流量の変化をみた. 今年度の科研費ではレーザードップラー血流計を購入した. レーザードップラー血流計は血流を測定する機器のうちでも精度が高いといわれている. しかし, 口腔内での基礎実験は全くなされていないので, まずヒト口腔内で予備実験を行った. その結果, 測定部位の保持状態, 歯肉部との距離によりその値が変化することから, 正しい測定を行うためには固定が必要と考え, 測定針の固定方法, ステント法を新たに考案した. そのステント法を用いて測定部位と測定針との距離について検討したところ, 0.9mm〜2.2mmの測定距離が最も安定していた. また測定部位の変化によって値も変化することから測定は一定の部位で行えことにした. 以上の予備実験結果を踏まえた上で成犬での実験を開始した. 成犬では全身麻酔の状態で実験を行う. 麻酔薬, ネンブタールが血流に及ぼす影響について0〜90分の間で調べたところ, 20〜40分後が最も安定した値を示したので, 注入後20ズ40合の間に測定を行った. 成犬の抜歯前の血流量を測定した後, 片側の第1, 第2, 第3の前臼歯を抜去した. 抜歯後, 1,3,7,14,30,45日後の血流量の測定を行った. 抜歯前の血流量の値は1.80〜2.00(V)であったが, 抜歯後1日では2.70〜3.00(V)抜歯後3日では, 4.00〜4.50(V) 抜歯後14日では4.70〜5.50(V)とその値は大きくなった. しかし, 抜歯後30日では1.80〜2.20(V)抜歯後45日では1.80〜2.00(V)と抜歯前の値に戻った. この血流の値の変化は抜歯窩内の骨組織の再生と大きな関係があるものと考えられるので, 他の成犬を用いて抜歯後の組織標本を現在作製中である.
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