骨組織の形成および吸収の機序を解明するため、それに関与する大きな因子の一つとして血流量に注目して、レ-ザ-光を応用したドップラ-効果のある血流計を適用することを試みた。この血流計の適用は補綴学領域に応用した報告がないため、まず測定のための基礎的検討から開始した。すなわち、口腔内での測定を可能にするための歯肉用、顎堤用ステントを開発した。そしてそれらのステントを用いてプロ-ブの非接触状態での安定した値の得られる測定距離を決定し、測定を行った結果その血流量には日差変動は認められないが、呼吸による影響があることがわかった。そこで健康な歯肉、および顎堤の血流量を測定し、正常な状態での血流量を決定した。 ついで成犬を用いて抜歯後の血流量を抜歯したまま放置した状態とハイドロキシアパタイト人工歯根を挿入した部位とに分け、抜歯後治癒過程での血流量の測定、あわせて病理組織像を用いて経時的に観察した結果、両者とも同様の傾向がみられたが、血流量の変化の比率は抜歯したまま放置した状態の方が多いことがわかった。 そこで最終年度では異なった維持装置を有するパ-シャルデンチャ-を患者の口腔内に装着し、支台歯周囲と顎堤との血流量を調べ、同時に支台歯の動揺量も観察した。テレスコ-プデンチャ-とクラスプデンチャ-とでは床下粘膜の血流量には変化がみられ、コ-ヌステレスコ-プデンチャ-の方が血流量は低い値を示した。また支台歯の動揺量の異なる歯では動揺量の違いにより異なる波形がみられた。以上、3年間本研究を行ったが、一応の成果が得られたと思っている。論文として間に合わなかったが、今後発表していく予定である。
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