研究概要 |
円滑な咀嚼運動のためには, 歯列間に介在する食品の被破壊特性に対応した筋力発揮を行なわれるが, このためには当該食品の硬さを的確に識別する必要がある. さらに, 硬さの識別と同時に食品破壊時における咬合力や下顎運動の急激な変化に対応した筋活動の制御が行なわれる必要がある. そこで62年度において, 食品の硬さ識別能力について検討を行なった. 硬さの識別には発揮咬合力とそれに対応した下顎位に変化についての情報受容機講が関与していると推定されるので, 反復咬合によって性状が変化しないゴムブロックを試料とした. 特定硬度の対照ブロックを咬ませた後に任意の硬度の被験ブロックを咬ませ, 標準ブロックに比較して『硬』, 『同じ』, 『軟らかい』のいずれかを答えさせた. ゴム咬合時の噛み込み量の条件として, 対照ブロック被験ブロックのいずれも任意, 対照ブロックを任意に被験ブロックの噛み込み量を制限, 被験ブロックを任意に対照ブロックの噛み込み量を制限の3種類を設定した. 1.いずれの咬み込み量を認意とした場合には, ゴム硬度10度に対してテ70%以上の, 20度差に対してほぼ100%の正回答率を示し, 硬さの識別閾値は約4.8度と判定された. 2.対照ブロックの咬み込み量のみを制限する場合には, ゴム硬さ識別能にほとんど変化か生じない. 3.被験ブロックの咬み込み量のみを制限する場合には, 制限による識別能の低下が生じ, 制限が強い場合には識別不能の応答も出現する. なお, この条件による識別能の低下は, 被験ブロックの硬さを軟らかく感じていることによると損定される.
|