研究概要 |
特別養護施設入所者の口腔内の詳細な実態調査を行ない, 合わせて食事習慣及び食事内容の分析, さらに咬合力, 筋電計などの顎機能測定, また日常生活動作能力(ADL)や基礎代謝率の調査を行ない高齢者における咀嚼機能の役割を検討することを目的としているが, 現時点では口腔内の実態調査に合わせ食習慣(食事調理形態)と食事摂取内容の調査, ならびにADLの調査を終了した. これらの資料を基に, 各被検者の口腔内状況, ことに義歯使用の有無, 食習慣の一面として主食, 副食の調理形態の種類, ならびに全身的活動状態の指標としてADLの各レべルとの関係について検討を行ない, その成績を日本大学歯学会(昭和62年11)において報告した. その内容については日大口腔科学に投稿予定である. 更に現在食事記録を整理し, その栄養価分析を行なっている段階で, 次の日本大学歯学会及び秋期日本補綴歯科学会にて学会報告する計画である. なお, 器械を用いた測定については, 多数例に行なうのは困難であるため, 今回調査した被検者の内から一定の条件の者を選択して行なう必要があり, その検討中である. また器械の扱いにも習熟中である. 前述の学会報告の要旨について簡単に述べると以下のようである. 1.ADLレベルの低下に従い高齢者が増加していた. 2.ADLレベルの低下に従い常食形態で食事を摂取するものの割合が減少していた. 3.義歯と食事形態の関係では, 主食, 副食とも常食を取るものは, 義歯使用者の占める割合が多かった. 4.ADLと義歯使用状況を見ると, ADLレベルの低下にともない, 義歯使用者の割合が減少し, 逆に義歯を所持しないものが増加していた. このように高齢化ならびにADLの低下に伴い食事摂取の状況が悪化することが考えられるので, 更に摂取栄養価を含め咀嚼機能の役割を検討してゆく計画である.
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