研究概要 |
歯学教育において, 実技実習は重要な分野であり, 従来からマンツーマンで行なうのが最良とされている. しかし効果的な教育を行なうためには今までの教育方法をより科学的に解析することが必要と考える. そこで補綴物製作の際, どのポイントをみたら正しい情報を得られるか, 目の動きをアイマークレコーダーで追い補綴物製作にどのように関わっているかを検索した. アイマークレコーダーシステムは近赤外線を角膜反射させ, 視点を被験者の見ている被写体全像の中にマークさせることができる. まず手始めに補綴物製作丸経験者と初心者との差を大臼歯の咬合面を書き写すことで判定をした. すなわち約5倍大の下顎第一大臼歯咬合面観を原図として左側におき, 右側にそれと同じ図を書かせた. その結果, 初心者はスケッチをする際, 経験者の約28%増の時間を必要とした. ところで眼球運動の分析では, ある点をある時間以上注目していると停留点とするが, 本実験では停留時間は経験者87.3%, 初心者82.4%となり初心者は目を動かす時間が多い. また, 停留する状態も原図側に2回以上停留してから図を書くことや, 停留頻度, 移動ベクトルの違いなどからも初心者と経験者の差を見出すことが可能であった. これらの結果より経験者の見ているところと初心者の見ているところとの違いが明らかになり, その点を重点的に教えることで学生, 指導者ともに時間や労力を減じて, なお一定の効果が期待できるものと思われる. 今後は例数を増し, その重点項目の拾い出しを行なう予定である. また, アイマークレコーダーを用い, 近年特に盛んになった補綴物に対する審美性をどこに重点を置いて改善すればよいか見出す研究も進めている. なお, 本研究の一部は昭和62年度日本補綴歯科学会関東支部学術大会で発表した.
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