歯学教育における実技実習をより効率的に行うために、その技術の習得過程の様子を科学的に分析することを目的とし、我々は歯学教育へのアイマ-クレコ-ダシステムの応用を試みた。本物究ではまず最初の試みとして、歯冠修復学の基礎となる歯のスケッチを例にとり、教育をすでに受けた者(経験者)と教育を受けていない者(初心者)の眼の動きを分析し、比較検討した。 その結果、初心者の眼の動きは、経験者に比べ複雑な軌跡を示しており、両者の間には明らかな相違が認められた。また、停留状態においても、初心者は経験者より多くの時間と回数を費やすことが明らかになった。これらのことより、我々は初心者がスケッチに慣れる従い対象物を認識する過程が進歩していく様子を客観的に評価できるものと考えている。 本研究では、アイマ-クレコ-ダシステムを導入することにより、被験者の眼の動きを定量的に解析することができ、なおかつどの部分を見ているかを簡単に把握できるなどの有効性が明らかになったので、今後さらに歯学教育への応用について検討を重ねたいと考える。また、歯科補綴学領域における審美的側面に評価するにあたっても有効と考え、その方面に対しても現在応用を進めている。研究方法としては、歯科医と歯科関者以外の人との、審美性に関与すると思われる因子についての比較をはじめ、審美性に関する項目および順位、また歯科医と一般の人との眼の動きから印象の相違などについて検討を行っている。
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