研究概要 |
放射線照射により変化を受けた癌細胞は抗原性の高まることが推測されており,放射線治療と癌免疫の効果は相乗的に作用すると考えられる. しかし,放射線照射を受けた局所は組織学的に阻害を受け,免疫の作用場所として機能するか否かは不明である. そこで本研究では,放射線治療による高められるであろう担癌宿主の癌免疫能が照射局所でどのように作用するかと検討した. 即ち.BALB/cマウスおよびその同系腫瘍であるMethーA細胞を用いて以下の実験を行った. 実験1:放射線局所照射が免疫系に与える影響をしらべた. その結果,体重の変化については100ラド連日3回,50ラド連日6回計300ラドの照射では一時的な体重減少をみるが1週後にはコントロール群をほとんど〓らない程度に回復した. 一方,末梢血白血球数・リンパ球数はともに照射開始後より急減し,1週後にはわずかに回復傾向を示すが,6週後に至るまでコントロール群に比し低い. 同様の傾向は胸腺・脾臓重量についてもみられた. 脾臓リンパ球数は一時的な増加ののち急減するが,2週後には回復した. 脾臓NK活性はほとんど変動しなかった. 実験2:In VitroにおけるMethーA細胞の放射線感受性を検討したところ,100ラド照射ではコントロール群と近似した増殖を示すが,300ラド以上では細胞増殖はほとんどみられなかった. 実験3:移植腫瘍に対する放射線局所照射により, 非照射部への再移植腫瘍は有意な増殖抑制効果をみた. 同時にNK活性の増強もみられた. しかし,CTLには有意の変化はなかった. また,腫瘍に対し放射線照射を行なったのち,脾リンパ球と採取し,これを用したWinnーAssayを行ったところ,有意の腫瘍体積の抑制効果をみとめた. 今後はこの抑制効果を示す免疫能の解析を行う予定である.
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