放射線照射により変化を受けた癌細胞は抗原性の高まることが推測されており、放射線治療と癌免疫の効果は相乗的作用があると考えられる。しかし、放射線照射をうけた局所は組織学的に障害をうけ、免易機構の働く場所としては好ましくない状況が出来る可能性がある。今回は放射線照射による抗腫瘍効果が照射局所でどのような機序で起るかを検討して、昭和62年度では放射線照射による担癌宿主の一般状態及び腫瘍の放料線耐性さらに免疫的にエフェクター細胞の一部について解析した。昭和63年度では照射局所における抗腫瘍結果の解放をさらに進めた。 1.移植腫瘍への放射線照射による腫瘍免疫の増強効果は非照射部位への腫瘍再移植を有意に抑制した。そこで腫瘍に放射線照射を行ったマウスの脾リンパ球を用いてWiscer Assayを行う際に各種抗血清を用いた中和試験を用いたところ、腫瘍の抑制にはNK細胞とT細胞が関与していることが示唆された。 2.抗腫瘍効果の発現部位では腫瘍周辺に早期よりリンパ球浸潤が認められた。このリンパ球をABC法を用いた免易組織学的検討で分析したところ、リンパ球のサブセットは主にT細胞とNK細胞であった。 3.放射線照射による抗腫瘍効果についてその要因を解析したところ、高線量の放射線照射では、放射線の直接的殺腫瘍効果以外に局所の血管腔の狭小化、血管壁の肥厚による栄養補給の低下が抗腫瘍効果として作用していることが明らかとなった。一方、低線量の放射線照射では主に免疫機序に基く抗腫瘍効果が認められた。さらにエフェクター細胞の浸潤に対し、低線量の放射線照射は大きな影響を与えないものと考えられた。
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