口蓋形成術後の口蓋形態と口蓋化構音発現との関連性を明らかにする目的で、口蓋裂単独症例と片側住唇顎口蓋裂症例について、1.従来の粘膜骨膜弁法と教室の小浜が行っている粘膜弁法による口蓋形成術後の歯列・口蓋形態の分類、2.術後の言語成績の評価、3.口蓋化構音症例と正常構音症例の歯列・口蓋形態の特徴、4.エレクトロパラトグラフによる口蓋化構音産出時の口蓋と舌との接触状態の観察を行った。研究対象は、粘膜弁法による口蓋形成手術を行った42症例(口蓋産裂単独18症例、片側性唇顎口蓋裂24症例)と粘膜骨膜弁法による口蓋形成手術を行った77症例(口蓋裂単独46症例、片側性唇顎口蓋裂31症例)で、術後2年以上経過し上顎の石骨模型による分析を行い得た症例である。その結果、次のような所見を得た。1.言語成績は、口蓋裂群の場合、両手術法とも類似した傾向を示したが、片側性唇顎口蓋裂郡の場合、粘膜骨膜弁法に口蓋化構音の出現頻度が高い傾向がみられた。2.術後の歯列・口蓋形態は、「正常歯列」と「V字状または狭窄歯列」の2グループに分類された。口蓋裂単独郡、両手術法とも「正常歯列」が80%以上も占めていたが、片側性唇顎口蓋裂郡の場合、「V字状または狭窄歯列」が粘膜弁法29.2%、粘膜骨膜弁法61.3%であった。3.正常構音症例の場合、両手術法とも「正常歯列」を有する者が多く、口蓋化構音症例の場合、両手術法とも「V字状または狭窄歯列」を有する者が多い傾向が認められ、言語成績と歯列・口蓋形態との関連性が示唆された。4.口蓋形成手術前後におけるD-D間幅径の縮小の程度が大きい程(-5mm以上)、口蓋化構音を示す傾向が認められた。5.口蓋化構音産出時のエレクトロパラトクラムを観察したところ、口蓋上の舌接触は、両側臼歯部の内側で最も口蓋の正中に寄っていることが認められた。
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