前年までに局所麻酔薬アレルギー反応の診断法として、局所麻酔薬に対する特異的なIgE抗体を証明するRAST法を開発し、局所麻酔薬にアレルギーをもたない被験者の正常RAST値を算出していた。本年度は全国各地で報告された局所麻酔薬投与に伴ってアナフィラキシィー様反応をきたした患者の血清を手に入れ、RAST法を応用してみた。6名の患者にRAST法を応用した結果では、いずれも正常範囲内にあった。6名のうち3名は他に抗生物質などを併用しており、局所麻酔薬によるアレルギー反応ではない可能性がある。また、残りの3名は局所麻酔投与によるアレルギー反応がIgE抗体を介するアナフィラキシィー反応とは考えにくい症例でもあった。すなわち、これらアレルギー反応は局所麻酔薬ではなく同時に投与された併用薬剤によるものか、もしくはIgE以外の抗体によるアレルギー反応である可能性が強い。また、本年度はIgE抗体によるアナフィラキシィー反応以外に、IgG抗体、IgM抗体についてのRAST法の開発を試みた。Berson&Yallowの方法に従い、ヒト抗IgG抗体を^<125>Iで標識し、前年と同様にセルロースディスクにリドカイン、プロカインおよびメチルパラベンのカルボン酸誘導体をウシ血清アルブミンとCouplingさせ、被験者の血清とインキュベートしてIgG抗体に関するRAST値を算出した。しかし、抗IgG抗体のヨードラベルの標識率が上がらず、IgG抗体に対するRAST値はIgE抗体に対するRAST値に比べてかなり低値を示した。したがって、現在は標識率を上げるために種々工夫している。
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