歯牙電気刺激による体性感覚誘発電位(SEP)に関し以下の研究を施行した。1.同一刺激電流強度においてstimulus rateの変動が及ぼす影響、刺激電流強度と主観的疼痛表現との相関性についての基礎的研究。 2.非ステロイド性解熱消炎鎮痛剤diflunisal(DFS)250mg投与後、SEPの経時的変化 3.Diazepamの低濃度頻回静脈内投与によるSEPへの影響 4.段階的笑気濃度変化に伴うSEPの変動 その結果、これら刺激条件の変動にかかわらずN70、P100、N155、P260、N350の5相性波形が共通して認められた。Stimulus rateの減少につれN155-P200振幅が増大した。これはSEP回復機能の改善、刺激予測及び注意力の高まりとの関連が考えられた。刺激電流強度、SEP振幅と主観的疼痛の相関関係を比較した結果、後期成分であるN155-P260は主観的疼痛と強い相関性を示した。DFS投与に関しては、投与後1時間N155-P260が有意に減少した(P<0.005)。DFS血中濃度の増加に対してN115-P260はr=-0.34(P<0.01)の負の相関を示した。一方N155-P260は笑気濃度の増加につれて減少し、酸素濃度が増加すると徐々に回復した。15%笑気はN70、P100、N155において潜時を有意に遅延させ、30%笑気は全成分に対し遅延させた。Diazepam静脈内投与はN155潜時を延長させ、P260とN350は判読不能とした。N70-P100振幅は投与後やや増大しその他の振幅は減少した。以上よりN155-P260は感覚情報の大脳皮質における分析処理過程を表わす電位変化と、N70は歯牙電気刺激に応じる頭皮上誘発電位の初期陰性電位と考えられる。DFSとdiazepamは主に大脳の認知思考性高位中枢に作用することも示唆された。
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