研究概要 |
口腔内器官における神経伝達物質の役割を明らかにするためにラットの頬粘膜, 歯髄, 三叉神経脊髄路核をとりあげ, 各種神経伝達物質の分布とその起始細胞について, 免疫組織化学的手法を用いて形態学的に検討した. その結果, 頬粘膜下組織から粘膜上皮にかけて豊富なcalcitoninーgeneーrelated peptide(cGRP), substanceーP(SP)陽性線維が認められ, 粘膜上皮においてはこれら二つのペプチドがほとんどで, 共存を示唆する所見が得られた. 歯髄においては豊富なcGRP陽性線維が認められたが, その他のペプチドについてはほとんど観察されなかった. 次に頬粘膜, 歯髄に逆行性トレーサーである, fast blue(FB)を注入し, 三叉神経節において二重標識されたcGRP細胞の役割について比較検討し, さらに幼若時に投与することによって小型のtype B細胞を特異的に減少させるといわれているcapsaicinにより処置したラットの頬粘膜, 歯髄におけるcGRP線維について検討した. 以上のことにより, 三叉神経節において頬粘膜に投射するcGRP細胞は比較的小型のものが多く, 一方歯髄に投射するものは中型〜大型の陽性細胞であることがわかった. 三叉神経脊髄路核における各種神経伝達物質の分布も明らかとなり, 特に尾側亜核の表層にこれらが密に分布し, さらにその中でもSP陽性を示す細胞の多くがenkephalin (ENK)に対して陽性を示すことが明らかとなった. また, SP, cGRPの両者を含むtype B細胞が, 脊髄路核尾側亜核のI,II層に投射することがわかった.
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