三叉神経の知覚伝達機構における、種々の神経活性物質の役割を明らかにするために、ラットの三叉神経脊髄路核(nVsp)における種々のペプチドおよびカテコラミンにつき、それらの分布と共存に関し、免疫組織学的手法により検討した。 ペプチドはnVsp尾側亜核、とりわけその表層に密に分布することがわかった。同部において、calcitonin geneーrelated peptide(CGRP)については、免疫反応陽性細胞は認められず、線維のみが観察された。一方、三叉神経節にはCGRP陽性細胞が存在することが知られており、nVsp内のCGRP陽性線維は三叉神経節内細胞に由来すると考えられた。nVsp尾側亜核は温痛覚伝達の一次中継核と考えられており、これらのペプチドは温痛覚の伝達に深く関係していることが示唆された。nVsp尾側亜核における、各種ペプチドの陽性細胞の分布には類似するところが多く、2種以上のペプチドの同一細胞内共存の可能性が考えられたため、螢光抗体法による二重染色により検討した結果、substance P(SP)陽性を示すnVsp尾側亜核内の細胞の約4分の3が同時にenkephalin(Enk)を含有することがわかった。また、一部の細胞でsomatostatin(SOM)とSP、SOM、Enkの共存が認められた。 カテコラミンは吻側亜核から尾側亜核までややびまん性に広く分布し、温痛覚伝達のみならず、広範なnVsp機能に関与しているものと思われた。
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