研究概要 |
昭和62年度は, 以下の研究を研究分担者が行い, 研究代表者が総括を行った. 1)生力学的研究:超弾生材の力学的特性値を用いて力学解析を行うに際し, 三次元有限要素法を用いて, まず, 歯および歯槽骨, 顎骨に対する咬合応力解析を行った. 解析結果としては, (1)咬合力が歯を介して生じる反力と主応力の分布状態を確認することが出来た. さらに, (ii)その応力分布を基に, 力学的に適切と考えられる矯正装置の設計に対する基礎的データを提供することが出来た. 2)組織学的研究:超弾性力を用いて培養系の細胞に一定荷重を与えると, 細胞レベルでの分化能の指標の一つであるPG合成能が増加することが明確になった. また, この指標をin vivoの実験系に応用するために, イヌを用いた超弾性ワイヤーによるlevelingと超弾性コイルスプリングによる犬歯の遠心移動のモデル実験, 装置を考案した. さらに, ラットを用いた矯正力の大きさと歯の移動速度との関係を知るための実験, 装置も考案した. 3)神経生理学的研究:従来, 解剖学的理由から微小神経電図法による歯根膜感覚単位活動の記録は困難とされていたが, オトガイ孔を記録部位とすることによって, 微小神経電図法を用いて, 歯に超弾性力を加えた時に, これに応答するヒト歯根膜感覚単位の発射活動を記録することが可能となった. さらに知覚として, 歯への小荷重により歯根膜感覚単位に一定の応答が生じる方向が存在することが判明した. 4)理工学的研究:NiTiワイヤーの熱処理法の研究から, 熱処理の温度と時間との組合せにより, 同一線径でも異なった超弾性力を発現させることが可能となった他, マイルスプリング状に加工しても同様の性質が得られた. また, ワイヤーに直接通電して発熱させる. DERHT methodを考案してワイヤーの屈曲, 形状付与ならびに力のコントロールが可能となったため, より多様な目的に合わせたワイヤー, コイルスプリングが, 製作可能となった.
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