研究概要 |
本年度の研究計画に従い検討を行ない以下の成果を得た. 1.肥満細胞の生理活性物質の生合成・貯留・分泌機作の制御に関する研究では,まずヒスタミン生合成酵素が,クルココルチコイドによるその生合成が著明に促進されることを見出した. 酵素の生合成を調節する因子は現在不明なので, ここで見出されたステロイドによる誘導合成の促進作用は注目されその生理的意義を解明する必要がある. そこで,動物(ラット)体内でグルコルチコイドで酵素が誘導合成される組織を調べたところ, 胃粘膜の肥満細胞の酵素がステロイドに反応することがわかった. 生理的には, ストレス潰瘍の形成と密接に関連していることがわかった. しかし, 胃組織以外の組織の肥満組胞の酵素はステロイドに反応しないことから, 肥満細胞に存在が知られている分化程度の差によるサブタイプの差異によって反応が異なることが考えられる. 分泌機作については, compound48/80を用いて,分泌の初期反応について詳細に検討し,リン脂質とくにPIー依存性PLaseCとPLaseA.ナ_<2.ニ>の相互作用の重要性を示唆することができた. 2.肥満細胞の増殖と顆粒形成については, 骨髄由来ILー3依存性肥満細胞を用いて,上記ステロイドの作用を検討しているところで,増殖と細胞分化の差違によるステロイド作用を解明していく予定である. 3.肥満細胞と炎症関与地細胞との相関については,炎症関与細胞として,血管内皮細胞と血小板をまず選び,肥満細胞が刺激されると放出される強い生理活性物質のプロスタグランジンD.ナ_<2.ニ>との関係を検討した. 血小板は,ウサギ血小板を用いPGD.ナ_<2.ニ>の受容体とβ.ナ_<2.ニ>受容体との関係を調べた. PGD.ナ_<2.ニ>とβ.ナ_<2.ニ>アゴニストはともにcAMPレベルの上昇を介してヒスタミン分泌を阻害するが,その際PGD.ナ_<2.ニ>はβ.ナ_<2.ニ>の受容体結合とcAMP生成能を高めるupーregulationをしていることを発見した. 今後この機備とその意義を解明する予定である.
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