研究実施計画に従い以下のような研究成果を得た。 〔I〕肥満細胞の機能の多様性について: (a)肥満細胞の血管内皮細胞への接着反応を解析した。実験方法は、肥満細胞(癌化肥満細胞・粘膜型肥満細胞・結合織型肥満細胞)を^<51>Crとインキュベ-トし、細胞を^<51>Crで標識する。血管内皮細胞はブタ大動脈内皮細胞を細胞培養する。^<51>Cr標識肥満細胞の血管内皮細胞への接着反応を解析した結果、成熟肥満細胞は血管内皮細胞に接着しないが、未分化細胞である癌化肥満細胞、及び増殖能を有し将来結合組織型肥満細胞に分化する粘膜型肥満細胞は、TPAで活性化した内皮細胞に接着する。TPAは内皮細胞のcキナ-ゼを活性化し、新なタンパク質合成を行い、それにより肥満細胞を接着させるが、接着に際して肥満細胞側にもTPAにより何らかの変化が生じ接着が促進されることを見出した。 (b)肥満細胞のヒスタミン合成酵素の活性調節を明らかにした。癌化肥満細胞と粘膜型肥満細胞は、グルココルチコイド、サイクリックAMP、Ca^<2+>によってそのヒスタミン合成酵素の活性が調節を受けることを明らかにした。cAMPはAキナ-ゼ、Ca^<2+>はカルモジュリンを介して作用する。 〔II〕肥満細胞のアラキドン酸代謝と炎症関与細胞の代謝調節について: (a)肥満細胞が刺激を受けるとアラキドン酸からのPGD_2合成が増加する。PGD_2は、肥満細胞にあるPGD_2レセプタ-を介して、cAMPの生成を行う。このPGD_2のレセプタ-反応は、レセプタ-のリン酸化によって調節される。 (b)PGD_2及び代謝産物Δ^<12>-PGJ_2は血管内皮細胞に作用して、その核画分に存在する分子量31Kのタンパク質を新規に合成する。この31Kタンパク質は、等電点5.4であるが、いわゆる熱ショックタンパク質と異なり、熱処理では産生されないが、ヒ素により誘導されるタンパク質と類似のタンパク質である。現在、生理機能を検討中である。
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