研究概要 |
ベニバナ(Carthamus tinctorius)のつぼみより誘導した培養細胞(CafーDK)から植物ホルモンや種々の培地添加物等の調節により,従来の株の19.3倍のビタミンE(トコフェロール)含量を示す高生産株(CafーB2KC)を分離した. さらに,生合成前駆体のフィトールの添加により,5倍の増量に成功した. トコフェロールが葉緑体で生合成されるとの報告より,この株について光照射下に培養し,緑化株の分離を試みたが全く緑化が認められなかった. そこで新たに芽生えより光照射下にカルス化し,やや緑化したCaー2株を分離した. このCaー2株は総トコフェロールでCafーB2KC株の1, 4倍,中でも最もビタミンE活性の高いαートコフェロール含量が高いのが特徴であった. フィトール添加の効果は総量ではCafーB2KC株の1/2と低いものの,αートコフェロールは1, 6倍とむしろ高い含量を示した. しかし,Caー2株においてもこれ以上の緑化及びトコフェロール量の増加は認められなかった. そこで,次に葉緑体とトコフェロール生合成の関係をより明確にするために,ベニバナ以外の数種の植物の培養細胞について,暗所で培養した株と光照射下に分離培養した緑化細胞についてトコフェロール含量を比較した. その結果,ヒマワリ(Helianthus annuus)で3, 7倍,ホウレンソウ(Spinacia oleracea)で6, 3倍,フキ(Petasites japonicus)で16, 2倍そしてダイズ(Glycine max)で133倍と全植物で緑化による増量が認められ,葉緑体におけるトコフェロール生成を支持する結果が得られた. 本年度に設備々品として購入した細胞融合装置(Shimadzu SSHー1)の設置が遅れたために,融合によるベニバナの緑化細胞は得ることはできなかった. しかし,ベニバナ培養細胞及び幼植物の葉肉細胞由来のプロトプラストの分離条件は確立した. 現在は融合条件,さらに各プロトプラストの培養条件を検討中である.
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