研究概要 |
ペントバルビタール(30mg/kg,i.v.)で麻酔した雌雄雑犬(体重10ー18kg)の胸部を正中切開し心臓を露出した後, 0.5%エパンスブルーを心尖部より心筋内に注入した. この色素は直ちに心筋内に走行する心臓リンパ管を通り, 肺動脈, 大動脈の裏側にある心臓リンパ節に数分で到達した. リンパ管, リンパ節を着色することによって, その位置をはっきりさせることができた. このリンパ節の部位から心臓側に外径1.09mm, 内径0.38mmのポリエチレンチュービング(イントラメディック)を挿入し, 反対側を喉の所で体表面に出し固定した. リンパ管は非常に脆弱でチュービングを挿入するのは難しく, 成功率は約2割であった. 心臓の左冠動脈前下行枝あるいは廻旋枝を剥離し冠動脈開塞用のオクルーダーと電磁血流計プローブを装着した, オクルーダーとプローブの端子は背中の所で体表面に出した. これらの手術, 準備が終らした後閉胸し, 感染防止のためペニシリンG40万単位を投与した. チュービングから滴下してくるリンパ液を1時間毎に氷冷した小試験管内に集めた. リンパ液は採取した後, 液体窒素で窒素で凍結し電気泳動にかけるまで-80℃で保存した. リンパ液の流出速度は動物によって種々であったが, 閉胸直後では約0.5ml/hrから2ml/hrであった. 時間が経つに従ってリンパ液(あるいは多少混在する血液)も凝固反応を起こし, 流出速度が低下したり, チュービングがつまったりした. 細いチュービングなのでヘパリン液を逆流させることも困難であり, この改善策については次年度にもちこされた. オクルーダーの先端のバルーンに生理的食塩水を送り込むと不整脈が発生し, 冠血流量が減少して冠動脈が狭窄されていることを示唆するデータが得られた. 短時間の虚血(30分以内)ではリンパ液の流出速度に変化を認めなかった. 採取したリンパ液を二次元電気泳動にかけると全体のパターンは血清のそれと類似していた.
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