研究概要 |
ビタミンK依存性血漿蛋白貭プロテインSは,別のビタミンK依存性セリンプロテアーゼの活性型プロテインC(APC)による血液凝固第Va因子,VIIIa因子の失活化を促進するコファクターであり,血小板や血管内皮細胞などの細胞膜リン脂貭上におけるAPCのレセプターとして機能する. 申請者は,これまでに反復性の重篤な血栓症を呈する先天性のプロテインS欠乏症3家系22症例を発見し, プロテインSがプロテインCと同様に重要な生理的凝固制御因子であることを明らかにした. 本研究においては, プロテインSは, 血中ではその半分量が補体系の制御因子の1つC_4b結合蛋白貭(C_4bp)と可逆的に結合し複合体として存在し,APCに対するコファクター活性は遊離型のプロテインSにのみ存在することを, 精製プロテインS,C_4bpを用いたin vitro実験ならびに先天性プロテインS欠乏症の患者血漿中のプロテインSの存在状態を検索することによって明らかにした. この事実は,血中のプロテインSコファクター活性の低下に基づく血栓塞栓性疾患の発症要因には, 血中の遊離型プロテインS濃度の低下, すなわち, C_4bp濃度の増加やあるいはプロテインSとC_4bpの動的平衡に影響を与える他の因子の変動を考慮しなければならない. そこで, 申請者は先天性プロテインS欠乏症をはじめとする各種の凝固・線溶・補体系因子を測定し,遊離型プロテインS濃度に影響を与える因子の検索を行った. しかし, これまでの検索では, 遊離型プロテインSの濃度と高い相関を示す因子を明らかにするには至っていない. 今年度の研究成果に基づき, 次年度もひき続き遊離型プロテインSの濃度に影響を与える因子の検索を行うとともに, プロテインSとC_4bpの結合状態,C_4bpによるプロテインSコファクター活性の阻害機構を明らかにしたい.
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