ビタミンK依存性血漿蛋白質プロテインSは、別のビタミンK依存性セリンプロテアーゼの活性化プロテインC(APC)による血液凝固Va因子およびVIIIa因子の失活化を促進するコファクターである。PSの作用機序は、血小板や血管内皮細胞上におけるAPCのレセプターとして、またXa因子によるVa因子の保護作用を排除することによると考えられている。これまでに世界中で多数例発見された先天性PS欠損症の多くは重篤な血栓症を発症していることから、その原因の究明は急務である。ところで、PSは血中では補体系制御因子のC_<4b>結合蛋白質(C_<4bp>)と解離・会合し、平衡状態にあり、コファクター活性は遊離型のみに存在しており、PS欠損症患者では遊離型PSが著しく低下し、大部分はC_<4bp>との複合体であることが明らかにされている。また、先天性PS欠損症患者では、血中PSの抗原値よりも活性値の低下が著るしいことも知られている。そこで、今年度申請者は、C_<4bp>・PS複合体のもつ役割について検討を行った。その結果、(1)C_<4bp>・PS複合体は、遊離型PSのコファクター活性を阻害する;(2)C_<4bp>・PS複合体は、遊離型PSと拮抗的にAPCに結合する;(3)先天性PS欠損症患者では、遊離型PSよりも多量に存在するC_<4bp>・PS複合体によって遊離型PS値に依存するコファクター活性が完全に阻害されることが原因となる;ことが明らかになった。また昨年度からの継続研究として、C_<4bp>分子上のPSに結合部位を明らかにして報告した。現在PSとC_<4bp>の相互作用を阻害するモノクローナル抗PS抗体を用いてPS分子上のC_<4bp>結合部位を検索し、また、PSのAPCに対するコファクター活性を阻害するモノクローナル抗PS抗体を用いてPS分子上のAPC結合部位を検索している。
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