ビタミンK依存性血漿蛋白質プロテインS(PS)は、プロテインC(PC)血液凝固制御系において活性化PC(APC)のコファクタ-として機能する。先天性PS欠乏症は血栓性素因の1つであり、我々は、これまでの国内外の臨床医との共同研究により、先天性PS欠乏症における血栓症発症頻度は既存のどれよりも高いことを明らかにしてきた。ところでPSは血中ではその半分量が補体系制御因子のC4b結合蛋白質(C4bp)との複合体として、残りの半分量は遊離型として存在し両型は解離・会合する平衡状態にあること、PS欠乏症患者はコファクタ-活性を有する遊離型PSが著しく低下していることが明らかにされている。先天性PS欠乏症の発生原因には、(1)PS分子の構造的・機能的異常(2)C4bp分子の構造的・機能的異常(3)PSとC4bpの解離・会合に影響を与える未知の因子の異常などが考えられる。そこで本研究では以下の計画を実施し、結果を得た。(1)先天性PS欠乏症の発生病理に関する研究:2家系37人についてPS活性とPSの分子状態を解析し、PS活性は概収遊離PS量と相関すること明らかにした。(2)モノクロ-ナル抗C4bp抗体の作製とPS・C4bp複合体形成機構の研究:C4bpに対する抗体を作製し、C4bp分子上のPS結合部位を明らかにした。(3)モノクロ-ナル抗PS抗体の作製とPSの構造機能相関の解析:PSに対する抗体を作製し、PS分子上のエピト-プの検索と抗体のPS活性に及ぼす影響を検討した。また抗体を用いた遊離型PSやC4bpとの複合体型PSの特異的EIA法を開発した。(4)PS・C4bp複合体の機能の解析:PS・C4bp複合体が遊離型PSのコファクタ-活性を拮抗的に阻害することを明らかにした。先天性PS欠乏症では、複合体型PSの増加が血栓症発症原因の1つとなることが明らかになった。
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