研究概要 |
近年,増加しつつある血栓性疾患の成因を解析するために無アルブミン,高脂血症を特徴とする無アルブミン血症ラットにおける凝血学的変化及び易血栓形成性について検討した.本研究過程において明かとなった点は, 1.無アルブミン血症ラット(NAR)及びSpragueーDawreyラット(SDR)において血液凝固能及び線溶機能を比較検討すると,両者の間に著明な差異は認めなかったが,ただ両者の血しょうに,抗人Xa活性を認めた.この抗Xa活性はNARでSDRの2ー3倍高く,この点はNARの抗凝固機構の代償性変化と考えられた.この,抗Xa活性を有する物質の同定については,現在解析中であるが,α2ーマクログロブリンである可能性が高い. 2.NAR及びSDRにエンドトキシンを投与して実験DICを惹起させると,SDRの死亡率が0%であるのに対してNARでは,30%と有意に高くNARは過凝固状態のリスクに対しての感受性が高い事が判明した.また,DIC発症時の凝血学的所見もNARの方に悪化傾向が認められた. 3.NAR及びSDRの腸管膜の血管に微小電極を刺入して実験的に血栓を形成させると,NARにより大きなまた溶解されない白色血栓の形成が認められ,NARにより血栓形成傾向が強い事が示唆された. 以上の事実は,低アルブミン及び高脂血症が血栓形成傾向に重大な関与をしている.
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