研究概要 |
昭和62年度より研究費補助金を受け、超音波を用いた周波数依存減衰値測定のシステムを作製した。システムはSSD・270の内部に3,5MHz発振器を有し、任意の大きさのROI内での減衰量を計測する。音場の補正を行いCRT上に減衰カ-ブを描出し、統計量としての平均を用いて最終デ-タとした。腹部臓器の減衰値を求める為に3.5MHzを用いたが、体表臓器に関しては、7.5MHzのアニュアレイ振動子を用いた。この音場補正も行った。次いで、肝及び脾の減衰値の正常範囲及び平均値を求めた。さらに諸肝疾患の減衰値を求め、特に限局性の病変として肝癌の減衰値の特徴を調査した。乳腺・甲状腺及びこれらの諸病変における減衰値とその態度のちがいを調査考察した。筋肉や脳の減衰値についての検索へと進んだ。以下に諸デ-タを示す。正常肝の減衰値は、0.55±0.05dB/cm/MHz、正常脾の減衰値は0.37±0.06dB/cm/MHz,脂肪肝は0.81±0.17dB/cm/MHz、肝硬変は0.63±0.13dB/cm/MHz、慢性肝炎は、0.64±0.12dB/cm/MHz、血管腫は0.35±0.10dB/cm/MHz、肝細胞癌は0.45±0.16dB/cm/MHz、転移性肝癌は0.43±0.15dB/cm/MHzであった。転移性肝癌では肺癌からの転移巣は0.38±0.12dB/cm/MHzの減衰値を示すのに対して消化管癌の転位巣では0.50±0.13dB/cm/MHz,であった。正常の甲状腺は1.279±0.224dB/cm/MHz、正常の乳腺は1.271±0.311dB/cm/MHzの減衰値をしめした。慢性甲状腺炎は0.824±0.325dB/cm/MHz、甲状腺機能亢進症は0,729±0.319dB/cm/MHz、腺腫様甲状腺腫は1,002±0.464dB/cm/MHz、腺腫は0.438±0.114dB/cm/MHz甲状腺癌は0.408±0.187dB/cm/MHzであった。乳癌は1,513±0.452dB/cm/MHz、腺維腺腫は1.218±0.536dB/cm/MHzを示した。腓腹節を用いた減衰測定では0.42±0.13dB/cm/MHzであったが、節を収縮させた時には0.86±0.32dB/cm/MHz、伸展した時は0.30±0.14dB/cm/MHzとなった。大脳の減衰は0.37±0.06dB/cm/MHz、小脳は0.52±0.14dB/cm/MHzであった。
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