研究概要 |
近年日本では急速に高齢化社会を迎えつつあり, 高齢者の健康の維持と体力の向上が重要な社会的問題となりつつあるが,60歳以上の行動体力の統計値については信用できる資料がない状況である. 30歳以上の男女については,文部省の壮年体力テストが実施されており,信頼できる測定値が報告されているが,60歳以上になると極端にデータがへり,また体力測定の種目についても,そのまま高齢者に適用するには不適当ではないかという意見も聞かれる. 本年度はまず高齢者に適する体力測定の項目を探りまたその平均値を求めるために,162名の60ー85歳の男女の被検者に20項目にわたる詳細な体力測定を実施した. その結果,身長や握力などのように従来の統計値を大差のないものと, 体重や垂直跳びなどのように従来の統計値と大差のないものと, 体重や垂直跳びなどのように従来の統計値とくらべて増加しているものがあることが,明らかになった. また閉眼片足立ちのように高齢者には不向きの測定種目もあり,これは開眼片足立ちによって代替した. つぎに測期的な身体運動によって,体力がどのように変化するかを調べるために,ゲイトボールとテニスのクラブに所属して毎週2・3回の割合で運動をしている高齢者に,上と同様の体力測定を実施した. ゲイトボールのプレイヤーは,平衡機能が優れている以外は一般の高齢者と体力差は認められなかったが,テニスのプレイヤーは循環呼吸機能など数項目にわたって優れた体力を持っていることが明らかになった. 更に極端な低体力者のトレーナビリティを調べるために,回復期の虚血性心疾患患者に運動療法として,ハイキングや水泳を実施させてその効果についても検討した. 以上の結果から,高齢者でもなおかなりの体力向上の余地があるものと考えられるので,来年度は同一人についての追試を試み,合理的な運動負荷量を追求する予定である.
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