研究概要 |
細胞膜表面糖脂質は細胞の種類によって大きな特徴を有し, 場合によっては細胞固有の組成を示す. 免疫担当細胞の各細胞クラスの糖脂質組成の特徴は特に顕著であり, 従来知られている免疫担者細胞表面マーカーとの相関が注目されている. ウサギ胸腺細胞はウサギの他の組織には全く観察されない二種類のガングリオシド(IV^3 Neu Gcn Lc_4 CerとVI^3 Neu Gcn Lc_6 Cer)を組織固有の糖脂質として含有し, また, この成分はステロイド感受性胸腺細胞に選択的に分布していることを明らかにした. この細胞をノイラミニダーゼ処理すると前者の70%, 後者の90%のシアル酸が除去され, 本来, この細胞にはほとんど検出できないそれぞれのガングリオシドのアシアロ体が産生された. 共存するGM_3とGD_3は両者に比べるとノイラミニダーゼ感受性は弱く, 両ガングリオシドは酵素に対して特に作用を受け易い配位を取っていて, ノイラミニダーゼ依存性表面抗原の変化に関与していると思われた. 胸腺細胞はノイラミニダーゼ処理によってConA結合性が大きく変化し, チミジン取り込み量も約5倍に増加した. また, 腹腔マクロファージと共存させるとノイラミニダーゼ処理胸腺細胞の場合, インターロイキン2を産生するようになる. おそらく, T細胞表面のノイラミニダーゼ処理で露出した構造にマクロファージが作用しこの活性が誘発されたものと思われる. 同様にナイロンカラム非吸着性のB細胞をノイラミニダーゼ処理T細胞に作用させてもインターロイキン2の産生は見られた. T細胞の増殖因子であるインターロイキン2の産生はT細胞自身が行うが, 生産自体は, マクロファージやB細胞によってシアル酸と受容体のレベルで二重に制御させていると思われる. 免疫系の活性がこのような表面糖鎖構造を介して制御されていることで, 他の重要な表面抗原の役割との関係を解析する糸口が見い出せたように思われる.
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