7ーアミノー4ーメチルクマリン(AMC)をリジンのカルボキシル基に連結させて作製されたLysーMCAはプロテアーゼによるペプチド結合の切断に放出する蛍光の波長が変化する。この性質を利用してリジンのカルボキシル基側を特異的に加水分解するAchromobacterプロテアーゼI(API)の触媒活性を微量に測定できる。そこで、種々の長さのペプチド鎖をもつ発蛍光性基質XーLysーMCAを合成してAPIのサブサイトの大きさと性質を検索しようと試みた。 Boc-Lys-MCAのアミノ基側にアミノ酸残基を1つ付加した基質Boc-AA-Lys-MCA(AA=アミノ酸)を合成してAPIの触媒活性をBoc-Lys-MCAのそれと比較したところ、Km値の減少とkcat値の増加によりkcat/Km値がほぼ2桁増加した。さらにアミノ酸1残基付加すればKm値は殆ど変化しなかったが、kcat値の増加によりkcat/Km値が幾分上昇した。以上の結果から、APIの触媒部位近傍には3つのサブサイトS_1、S_2、S_3が存在すると結論づけられた。 ほ乳類型セリンプロテアーゼには基質の加水分解を受けるペプチド結合よりアミノ基側の残基と相互作用する3つのサブサイトS_1、S_2、S_3が存在し、微生物型セリンプロテアーゼにはさらにサブサイトS_4が存在する。APIのサブサイトの個数とアミノ酸配列の類似性よりAPIがほ乳類型セリンプロテアーゼに属すると考えられる。 2つの基質Boc-AA-AA-Lys-MCAとH-AA-AA-Lys-MCAに対するAPIの触媒活性の比較より、APIにはサブサイトS_4は存在しないが、疎水性基と相互作用する部位がS_4近傍に存在すると推測される。
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