研究概要 |
AchromobacterプロテアーゼI(API)の一次構造解析の結果、APIはほ乳類型セリンプロテアーゼに分類された。このプロテアーゼ群は触媒中心がAsp102ーHis57-Ser194で形成されており、API中にもこれらの残基に対応する残基が確認された。APIの一次構造上の特徴は他のセリンプロテアーゼに比べてN、C両末端部に長いペプチド鎖の延長がある。ジスルフィド結合で保存されているのはCys36-Cys58のみである、触媒活性に重要な役割を果たしているAsp189Asp193がそれぞれGlu、Serに置換されている等である。APIの触媒特性と安定性の基盤解析を行うにあたり、まずサブサイトの大きさと性質の検索を発蛍光性基質を用いて行った。それによりAPIにはS_1,S_2,S_3の3つのサブサイトが存在することが判明した。サプサイトS_4は存在しないが、その近傍に疎水性基と相互作用できる部位の存在が示唆された。ほ乳類型セリンプロテアーゼとの一次構造比較及びサブサイトの大きさよりAPEのサブサイトS_1,S_2,S_3にはHis213ーGly214ーGly215が対応すると考えられる。ほ乳類型セリンプロテアーゼのサブサイトは一般にSer-Trp(Gly)-Glyで明らかにAPIのそれと異なっている。これがAPIの触媒活性の特異性に何等かの影響を及ぼしていると推測される。一方、本研究では活性部位His残基を蛋白質化学的に同定するため新しく発蛍光性アフィニティーラベル化剤、DLCK、を合成し、これを用いて少なくともHis56とHis57のいずれかが活性部位であることを示した。またアミノ基、特にαアミノ基の構造安定性への寄与を評価するためにアセチル化を試みた。その結果少なくともεーアミノ基がAPIの構造安定性に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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