研究概要 |
ラット脳より膜結合性ホスファチジルイノシトールキナーゼの精製をおこなった. 酵素は塩で洗浄した膜をトライトンXー100で可溶化し, 11,183倍にまで精製した. 比活性は150nmol/min/mg蛋白であった. 精製はQセファロースFF, セルロースホスフェイト, トヨパールHW55及びアフィゲルブルーで行い, 分子量は80,000であった. 本酵素はホスファチジルイノシトールだけをリン酸化し, ホスファチジルイノシトール4ーホスフェイトやジアシルグリセロールはリン酸化しなかった. Km値はホスファチジルイノシトールに対して115μM, ATPに対して150μMであり, 活性にMg^<2+>かMu^<2+>を要求した. ヌクレオシド3ーリン酸やヌクレオシド2ーリン酸は活性を著明に阻害したがアデノシン, cAMP, ケルセチンは阻容しなかった. この様な性質のホスファチジルイノシトールキナーゼを精製したのは我々が初めてである. 現在, 大量精製が終り, cDNAクローニングのためのプローブの作成とモノクローナル抗体の作成を始めている. 63年度は遺伝子のクローニングを行ってアミノ酸配列を推定し, 既知の細胞増殖因子受容体や癌遺伝子産物, チロシンキナーゼなどとの相同性, 基質結合部位, リン酸化部位などの考察を行い, 活性調節の分子機序を明らかにしたい.
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