研究概要 |
多くのホルモン、神経伝達物質、細胞増殖因子が、イノシトールリン脂質代謝亢進をひきおこして、細胞内情報伝達を伺るシグナルを発生し、作用発現へ至ることは良く知られている。その際分解されてシグナルを発生するホスファチジルイノシトル4,5-2リン酸(PIP_2)は微量にしか存在しないため涸渇し易い。それを防ぐためホスファチジルイノシトール(PI)からの代償性合成が活発となり、PIP_2量減少を抑制している。PIよりPIP_2合成の律速はPIキナーゼにあると考えれており、PIキナーゼが作用持続のキイを握っている。よってこおPIキナーゼを精製し、その性質を調べると共に、そのcDNAをフローニングし構造解析を試みた。ラット脳ホモジネートのPIキナーゼの約15%が細胞質画分に、残りが膜画分に回収された。細胞質画分をアフィゲルブル-DEAEバイオゲル、スーパーロースにて精製したところ、少なくとも4種のPIキナーゼが存在することが明らかとなった。一方、膜結合型PIキナーゼをトライトンX-100で可溶化後、QセファロースFF,ホスホセルトースカラム、トヨパールHW55、アフィゲルブルカラムにかけ単一まで精製した。分子量8万で収率2.3%、精製倍率は約1万1千倍、比活性は143.7nmol/mim/mgタン白であった。本標品100kgを用い、リジルエンドペプチダーゼにより限定分解し、C_<18>逆相クロマトによりペプチドを分取した。アミノ酸配列を決定し、それに相応するスクレオチドを合成した。一方ラット脳のcDNAライブラリーを作成し、オリゴヌクレオドプローブによってPIキナーゼをコードするcDNAをスクリーニングしている。
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