研究概要 |
1.初代培養ラット肝細胞を用いて酸性ホスファターゼの生合成, プロセシング及び細胞内輸送経路について検討した. 酸性ホスファターゼは64Kの前駆体として合成され, 62Kの中間体を経て1時間後には68Kのリソゾーム模型酵素へ変換された. また合成後28時間でリソゾーム内容物型酵素と思われる48Kの酵素が出現したが, この酵素は68Kの膜結合酵素がプロセスされたものと推定された. クロロキンで細胞を処理すると, 酸性ホスファターゼは, 他のリソゾーム酵素と異なり分泌されずに細胞内に存在していた. これらの結果から, 酸性ホスファターゼは, 他のリソゾーム酵素と異なる経路で, 膜結合酵素としてリソゾームに移行し, その一部がプロセシングをうけ内容物酵素に変換されると推定された. 2.ラット肝リソゾーム膜に存在する主要なシアロ糖蛋白質(MSGP)はα(107K)とβ(96K)のサブユニットからなるが, MSGPについて生合成,プロセシング及び細胞内輸送経路について検討した. MSGPは生合成後10分では主に粗面小胞体及び滑面小胞体に88Kと82Kの蛋白質として認められた. このときすでにゴルジ画に107Kのα鎖がみられたが, 生合成30分後には,α鎖の他に96Kのβ鎖も認められた. リソゾーム鎖,内容物画分及び形貭膜画分には生合成30分後からα鎖及びβ鎖が現われたが, これらの蛋白は3時間後にはリソゾーム膜及び内容物画分にのみ検出され,形貭膜画分からは消失した. これらの結果から,MSGPは生合成後,ゴルジ複合体でαからβ鎖への蛋白部分のプロセシングをうけ,リソゾーム及び形貭膜へ移行すること,また一旦形貭膜へ運ぼれたMSGPは,さらにリソゾームへ移行することが推察された.
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