研究概要 |
1.チトクロムP450cam(P450cam)及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の酸素化型中の結合酸素の伸縮振動の検出;(a)不安定なP450camの酸素化型を-25℃で安定化し,その共鳴ラマンスペクトル(406.7nm 励起)を測定したところ,1411cm^<-1>に強いラマン線が検出された. このラマン線は我々がすでに赤外スペクトルにより帰属したOーO伸縮振動(ν_<OーO>)の波数と一致していたので,このラマン線をν_<OーO>に帰属した. 波数値より判断するとP450camの結合酸素の電子構造は,ミオグロビンと同様にFe^<3+>ーO^-_2と記述される. しかし,P450camのν_<OーO>はミオグロビンと異り単一であるので,OーO結合のconformationは一種類と考えられる. (b)HRPの酸素化型のOーO伸縮振動の検出を共鳴ラマン法により試みたが, ^<18>O_2置換によりシフトするラマン線は検出できなかった. またS/N比を上げてFeーO_2伸縮振動の検出を試みているが,現時点では成功していない. 今後はP450camのνD2FeーO.ナ_<2.ニ>D2の検出らなびにν_<OーO>に対する基質カンファーの結合効果等を解析する予定である. この結果を,構造はP450と似ているが機能が異るクロロペルオキシダーゼのν_<OーO>と比較し,機能と構造の相関関係を解析することを予定している. 2.チトクロムP450によるアロマターゼ反応の解析;アンドロゲンよりエストロゲンの生成はステロイドのA環の芳香化を伴う. この反応は炭素〜炭素結合の開裂と共役しており,P450が触媒する一般的な反応(水酸化反応)とは異る点が多いので,P450のパーオキシ中間体(Fe^<3+>ーOOH)が関与していると考えられる. 研究分担者の渡辺らが開発した合成ヘムのパーオキシ錯体を用いてこの反応を解析したところ,A環の芳香化には一位の水素の活性化が重要であるとの結論が得られた. 現在,更にモデル系および酵素系,基質誘導体を用いて反応の解析を進めている.
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