研究概要 |
線虫C.エレガンスは頭部や尾部の物理的刺激に対して、反転運動などの反応をする。これら接触刺激の伝達を担う感覚神経細胞は、頭部にALML、ALMR、AVM、尾部にPLML、PLMR、PVMのそれぞれ3つずつ分布している。 アセチル化αーチューブリンに対するモノクローナル抗体である6ー11Bー1は、間接蛍光抗体法によってC.エレガンスの感覚神経のみを特異的に染色する。6ー11Bー1を用いて、これら感覚神経の位置や回路に異常が見られるかどうかを多数の検体でチェックすることができる。 我々は、これまでに分離されている約100種類の運動異常突然変異(unc ミュータント)に対して6ー11Bー1で間接蛍光抗体法を行ない、野性型と比較することによって感覚神経系に異常のみられるものをスクリーニングした。その結果、異常の形態や程度に差はあるけれども、23種類のunc変異(uncー1,unc-3,unc-5,unc-6,unc-13,unc-27,unc-30,unc-33,unc-34,unc-40,unc-44,unc-49,unc-51,unc-53,unc-55,unc-59,unc-61,unc-71,unc-73,unc-76,unc-85,unc-98,unc-104)で感覚神経系に異常が認められた。これらのunc突然変異は、神経系の異常が原因で運動異常を起こしていることが示唆される。 また、他の抗チューブリンモノクローナル抗体について、C.エレガンスで間接蛍光抗体法を行なったところ、特定の運動神経のみを染色するものや神経系全体と反応するものなどが同定された。これらの抗原(チューブリンアイソタイプ)の神経系における発現様式を調べる目的で、今後はチューブリン遺伝子群のクローニングを行なう予定である。
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