研究概要 |
ミオシンモノマーをシルコンコーティングしたガラス, あるいは雲母の薄いフィルム表面に固定し, 20nm以下から5μm以上にわたるいろいろの長さを持つアクチンフィラメントの滑り運動を観察した. 短いアクチンフィラメントは超音波処理によって調製し, それらの定量的観察は酸素を除去した溶液中で強力な励起光を用いて行った. 滑り運動の速度は, 5μm以上から約40nmまでフィラメントの長さによらず一定で, 約40nm以下では滑り運動は観察されなかった. この結果から, 滑り運動には約40nmすなわちアクチンフィラメントのらせんの約半ピッチで十分であることがわかった. 40nmのアクチンフィラメントが常に相互作用できるミオシン頭部の数は, その大きさ(長軸約20nm, 短軸約10nmの洋梨形)からして1〜2個である. したがって上の結果は, 1〜2個のミオシン頭部と半らせんピッチのアクチンフィラメントの構造単位で最大速度の滑り運動が実現されることを示している. これまでサルコメアという大きな集合体を用いて, ATP分解量とアクチンフィラメントの滑走距離との関係から, 平均して1ATP分解反応中に引き起こされるアクチンフィラメントの滑走距離が最大60nm以上になるということが示されていた. 上記の結果とATP分解反応速度を考慮して検討した結果, それと同じことが一本単独のアクチンフィラメントの運動においても起こっていることが確認された.
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