昨年、40nmのFアクチンが長いフィラメントと同じ速度で滑り運動することを報告した。40nmのFアクチンにはガラス表面のミオシン密度、Fアクチンの構造等を考慮して、せいぜい2個の頭部しか同時に相互作用できない。2個の頭部でこのような運動を達成するためには、Fアクチンが来るとそれが通りすぎる8ms(40nm/5μm/s)以内にミオシンはほぼ100%の確率で力発生サイクルに入らなければならない。ミオシンはM ADP Pi中間体を形成しているので、もし化学ー力学反応が1:1に共役しているとすると、A+M ADP Pi→Pi→ADP→APの反応で、PiとADPの放出速度が125S^<-1>以上でなくてはならないことになる。そこで筋原線維を用いて、同じ条件下(T〓23℃、μ〓70mM)で自由短縮している時のPiとADPの放出速度を測定した。M ADP Piから開始するため、激しく撹半している筋原線維の懸濁液にCa^<2+>非存在下で、T=OsにまずATPを加え筋原線維をrelax状態にする。そして、T=0.3s後にCa^<2+>を加え短縮を開始させる。Ca^<2+>を加えた後、0.05s、0.1s…後にPCAを加え反応を止め、溶液中のPiとADPを定量する(混合のdead time<10ms)。結果は、自由短縮がほぼ完了する0.1sの間にはPi、ADPが小量しか放出されず、短縮が終了してからpi、ADPが放出されるという結果になった。 以上の結果は次のような解釈される。M ADP PiにAが来ると、今の条件ではM ADP Piは直ちに(<8ms)力発生サイクルに入る(入らなければならない)が、Pi、ADPの放出は起こらず、何回かの力発生サイクルの後Pi、ADPが放出される。これは、我々が主張している化学反応ー力学反応の共役が1:1に共役しないモデルによく合う。
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