甲状腺悪性腫瘍の中には通常の方法ではその由来の明らかでないものがある。また同じ乳頭腺癌でも予後の良いものと悪いものが混在しその判別が困難である。それらの正確な鑑別と予後の予測を免疫組織学的に行ないあわよくばそれを穿刺吸引細胞スメアで術前に判定することを目標としてきた。これまでの結果は以下のようである。 I.甲状腺リンパ腫、小細胞性未分化癌、髓様癌相互の組織学的確定診断に当ってリンパ腫にはLCAが未分化癌にはケラチンか髓様癌にはCEAとカルシトニンが有力な鑑別上のマーカーとなり得る。 II.甲状腺癌25例に対し通常の組織検索とともに癌遺伝子蛋白である。Ha-γas P21 EGF TGFα Cmyc P62の発現を免疫化学手法にて調べた。それによって(a)未分化癌にはCmycが高頻度に発現する。(b)乳頭腺癌ではリンパ節転移陽性例でCmycの発現が強い。(c)種々の癌遺伝子蛋白の発現と分化癌の悪性癌との間には未だ一定の傾向がみられずさらに分析例を増して検討する必要がある。
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