研究概要 |
〔目的〕甲状腺癌93例についてC-myc p62,Estrogen receptor(ER)C-Ha-ras p21,Epidermal growth tactor,Transforming growth factor(TGFα)に発現を免疫組織学的に検討し、各種甲状腺癌の生物学的悪性度の判定において従来の病理組織所見以外の因子が存在するか否かを検討した。 また甲状腺髄様癌5例、未分化癌5例の術前に採取した吸引細胞診プレパラ-ト上にCarcinoembriogenic antigen(CE A),Carcitoninの両者を免疫染色することによって術前の組織診断を確実にすることを試みた。 〔結果〕1)C-myc p62免疫活性は、予後の悪い未分化癌で(91.7%)の高頻度にみられるうえ、乳頭癌の中でもリンパ節に転移のあった群での陽性率が有為に高く発現していた(P<0.01) 2)ER陽性細胞の多い癌ではEORTC(予後を示す指数)が低く、ER陽性率と予後とは逆相関がみられた。 3)C-Ha-ras p21は乳頭癌で高頻度に検出(69.2%)されたものの悪性度との関係は明らかでなかった。 4)EGFにおいても陽性率と甲状腺癌の組織型、悪性度いずれにも関係がみられなかった。 5)乳頭癌においてはC-Ha-ras p21とEGF,TGFαの陽性率には相関がみられたが悪性度との関係はなかった。 6)上記諸因子の発現状況によって濾胞腺腫と濾胞腺癌との鑑別を試みたが関連が得られなかった。 7)髄様癌と未分化癌は吸引細胞プレパラ-ト上のCEAとCarcitoninを調べることによって術前に100%鑑別が可能であった。以上により、甲状腺癌においてはC-myc p62の発現か生物学的悪性度を示す指標であり、FRの発現は悪性度と負の相関にあることが判明した。当初これらを吸引細胞プレパラ-ト上で行い、予後の判定を術前にすることを目指したが、技術的に困難で術前の鑑別が可能であったのは髄様癌と未分化癌においてのみであった。
|