本研究は昭和62年度からの継続研究であって、本年度においては、昨年と同様、旭川養護学校の協力を得て研究を展開した。本年度の研究の課題は次の2点において、研究を進めた。第1点、肢体不自由児がコンピュータを利用する場合の入力装置を市販の安価なものから選定し、使用の難易を観察し、利用方法を検討する。第2点、昨年に引き続き、障害児に最も適した入力装置を用いたWISC-R知能診断のコンピュータ・シュミレーション化とその実施結果の評価を行う。 第1点の課題については市販の高価でない入力装置((1)不用なキーにカバーをかけた通常のキーボード、(2)利用者が自由に手元で操作可能なエントリーキー、(3)タッチスクリーンの様々な利用)を用い様々な角度から利用の難易度を観察した結果、(3)のタッチスクリーンを机上に置いて、ソフトによってスクリーン上を適当な大きさに分割し、スクリーンの下に、テストに必要なシンボル信号、絵、文字を置きスクリー上からそれに触れる、利用方法が最適であることが知られた。 第2点の課題については、第1の課題で開発したタッチスクリーンとそのソフトを用い、WISC-R動作性テスト中の絵画配列、積木模様、符号問題をコンピュータ・シュミレーションに置きかえ、旭川養護学校の児童・生徒(7〜15歳)40名を被検者としてテストを行い、実際のWISC-Rのテスト結果と比較した。その結果、コンピュータ・シミュレーションによる検査結果は、WISC-Rの検査に比較して、障害児の能力に関するより正確なデータを与えることが知られた。 上記の成果は、電子情報通信学会教育工学研究会(1989年1月28日)で発表し、同報告誌にまとめた。
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