研究概要 |
著者は, 南海トラフの沈み込み帯における前孤ウエッジの弾性波速度の分布からウエッジの短縮とか伸張が生じていることを報告した. ところで, ウエッジの短縮がそれを構成している地層の弾性波速度の増加に比例しておりまた短縮の著しい所こそ巨大地震の発生頻度が大きい所と一致することからこれらの現象は震源域の変形に由来するもの考えた. そこで, 震源域が区分されている千島海溝と南海トラフのウエッジの速度分布断面に地震断層面を投影したところ, 沈み込み海洋プレートの上面の海洋地殻は沈み込みの極めて初期において断層形成により破壊されて, ウエッジの底面に底付けされているいることが明らかとった. また, 南千島の海溝付加帯では海洋地殻の破壊され始める深さは14kmと深いのに, 南海トラフでは8ー10kmと浅くなっている. このような違いが生じた原因は, ほかにもあるかも知れないがここでは海洋地殻と陸側基盤の相対的強度に系統的な相違があるからであると考えた. このようにウエッジ基底についてはかなり明かとなったので, 今回は四国沖の震源域について地震性小断層と段丘層との関係から, 主地震断層から派生する高角逆断層モデルによって地表の地殻変動が説明されないか検討した. 足摺岬周辺には海成中位段丘が分布するが, その高度は足摺岬で60^+mあり北端の伊の岬では20^+mとなっている. 伊の岬で観察した中位段丘をきる逆断層はN50°E, 60°NWを示し, 加藤(1983)が南海道地震の地殻変動を説明するために提唱した伊の岬断層の実在を明らかにした. 土佐清水の高位段丘をきるのは正断層でN50°ー80°Eの走行を示した. このことから足摺岬の中位段丘の成因に関しては宝永地震のような大規模な震源域を想定するか, または観察された正断層のような局地的な隆起運動を考慮することになる.
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