1)X線回折強度測定系の改良:遺伝子工学で量産された蛋白質の結晶には、その規則性や強度に難点がある場合が多い。このような問題に対処するために、自動回折計の測定ソフトウェアの徹底的な改良を行い、また筑波の高エネルギー研のシンクロトロン放射光を用い、0.3mm程度の小結晶で十分仕事を進められる測定条件を確立した。 2)インターロイキンー2(IL-2):六方晶系、斜方晶系、単斜晶系の三種の結晶を育成することに成功した。しかし、最も良好と思われた単斜晶系の結晶について本格的な回折データ収集を始めたところ、格子定数が最大2%も変化する現象に悩まされた。HPLCによる分析により、その原因がMet104のスルホキシド化にあることを突き止めたが、有効な対応策は見出せなかった。 3)βーインターフェロン(IFN-β):まず斜方晶系の結晶を得ることに成功したが、結晶の乱れや、双晶形成の傾向によって著しい困難に遭遇した。しかし、後にジオキサンの添加により、六方晶系の極めて良好な結晶を得ることに成功した。既に、"native"結晶の回折強度データの収集に成功して居る。重原子誘導体については、K_2PtCl_4、UO_2(AcO)_2、Mersalyl(Hg誘導体)の三つの有望な同型置換体を発見することに成功した。現在、これらの重原子の位置を"差のパターソン回"によって解く試みと、これを自動化するソフトウェア・システムの確立に努めている。従って約1年後には、IFN-βの立体構造が明らかになると思われる。
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