ビトロネクチンは1983年に発見された血漿糖タンパク質で、新しい血液凝固・線溶調節因子である。 本研究によって得られた新たな知見、成果は以下の通りである。 1.ヒト血漿中のビトロネクチンを免疫学的手法により定量する方法を確立し、1)肝疾患患者では血漿中のビトロネクチン濃度が大きく低下していること、2)75Kと65Kの存在比はヒトにより異なり、75Kの多いI型、75Kと65Kが同量のII型、75Kの少ないIII型、の3つのビトロネクチン血液型に分類されること、3)ビトロネクチン血液型は、疾患とは関係ないこと、などの知見を得た。 2.新しく開発したビトロネクチン精製法をヒト以外の動物であるウシ、ウマ、ニワトリ、ブタ、ウサギに適用し、ほとんど同じ精製度のビトロネクチンを容易に得ることができた。ヒト、ウシ以外からビトロネクチンを精製したのは世界初である。 3.ヒト血漿ビトロネクチンに対するマウスモノクローナル抗体を調製した。結局4つのハイブリドーマが確立し、抗体としてM1、M2、M4、M5、が得られた。この4種の抗体を用いて、ビトロネクチンの細胞伸展活性とコラーゲン結合活性の阻害を調べ、ビトロネクチンのコラーゲン結合ドメインがビトロネクチン分子のN末端半分側に存在する知見を得た。 4.ビトロネクチンをギ酸処理し、得られた断片をアフィニティカラム、イオン交換カラム、ゲルろ過カラムにより、コラーゲン結合ドメインと推定される断片を精製することができた。 このような多くの研究の成果が得られ、当初計画以上の大きな進歩が見られた。
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