研究概要 |
1.受容体とG蛋白質(Gi,Go)の再構成標品は, [^3H]GTPと[^3H]GDPを可逆的に結合した. 結合の時間経過および平衡定数は, アセテルコリン添加による影響が見られなかったが, 遊位の時間経過はアセチルコリン添加により速められた. アセチルコリン添加により解離が速められた[^3H]GTPまたは[^3H]GDPの量は受容体の量の5ー10倍で, 受容体1分子が複数個のG蛋白質分子に触媒的に作用していることを示し, 従来の定性的モデルと一致した. しかし実験結果を定量的に説明する理論式を得る試みはまだ成功していない. 2.ムスカリン受容体のアミノ酸配列中の部分ペプチドを合成し, ヘモシアニンと結合させたものを坑原として, サブタイプ特異的な抗体の調整を試みた. 現在の所, 脳ムスカリン受容体と反応するが心臓ムスカリン受容体とは反応しない抗体し種を得ている. 3.大脳から精製したムスカリン受容体は, 蛋白質キナーゼCによりリン酸化された. 1分子あたり当モル以上のリン酸が入り, セリンとスレオニンがリン酸化された. しかし, 両者の相互作用はGTP依存性高親和性アゴニスト結合で見る限り, 受容体およびG蛋白質の蛋白質キナーゼCによるリン酸化によって影響されなかった. 4.ブタ大脳よりGi,Goと異なる新しいG蛋白質Gnを調整した. Gnーαの分子量はGiーαとGoーαの中間で, GiーyとGoーyは蛋白質キナーゼCによってリン酸化されるが, Gnーrはリン酸化されなかった. 再構成実験の結果は, 精製ムスカリン受容体がGi,Go,Gnいずれともほぼ等しい親和性で相互作用することを示し, ムスカリン受容体が3種のG蛋白質を活性化できることを示唆した.
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